「訪問鍼灸マッサージって安全なの?」「高齢の親が受けても大丈夫?」「副作用やリスクがあるなら、事前に知っておきたい」――このような不安を感じる方は少なくありません。
たとえば、身体が弱っている高齢者に施術を行った際、「施術後にだるさが出た」「あざのような跡が残った」といった反応が見られることもあります。こうした変化を正しく理解しておかないと、「悪化したのでは?」と誤解してしまうこともあります。
訪問鍼灸マッサージは医療の一環として行われるため、安全性に十分配慮されていますが、副作用の可能性がゼロというわけではありません。正しく受けるためには、どのようなリスクがあるかを事前に知っておくことが重要です。
この記事では、訪問鍼灸マッサージの副作用やリスク、安全に受けるためのポイントについて、わかりやすくお伝えします。
さっそく、訪問鍼灸マッサージで起こりうる副作用についてみていきましょう。
訪問鍼灸マッサージで起こりうる副作用とは?

訪問鍼灸マッサージには、副作用が起こる可能性がありますが、ほとんどの場合は軽度で一時的なものです。
最も多くみられるのが「施術後のだるさ」「眠気」「筋肉の痛み」などです。
これは「好転反応」と呼ばれる現象で、身体が回復へ向かう過程で起こると考えられています。特に初回や久しぶりの施術後に起きやすく、通常は1~2日でおさまります。
また、鍼を使用する場合は「出血」や「内出血(皮下出血)」が生じることもあります。これは鍼が毛細血管に触れたことで起きるもので、青あざのような跡が残ることがありますが、自然に消えるケースがほとんどです(※1)。
まれに、鍼の刺激により「めまい」や「冷や汗」が起きることもあります。これらは体調やその日の体力によって起こることがあるため、施術前に体調を正しく伝えることが大切です。
訪問鍼灸マッサージにおける重大なリスクは?

重篤な副作用は非常にまれですが、いくつか注意が必要なリスクも存在します。
特に気をつけたいのが「感染症」と「神経損傷」です。
感染症については、使用する鍼が使い回しではなく、ディスポーザブル(使い捨て)であるかどうかが重要です。厚生労働省でも、使い捨て鍼の使用を原則としています(※2)。信頼できる施術者であれば、適切な衛生管理が行われています。
神経損傷は、筋肉の深部に鍼を刺す際にごくまれに起こるリスクです。ただし、国家資格を持つ鍼灸師が正しい知識と技術で施術を行えば、避けられるリスクです。
また、マッサージについても、骨粗しょう症などで骨がもろくなっている場合には、強い力を加えることで骨折の可能性がゼロとはいえません。そのため、施術前の情報共有が不可欠です。
安全に施術を受けるために必要な準備とは?

訪問鍼灸マッサージを安全に受けるためには、事前の準備と施術者との連携が大切です。
まず、主治医の診断と同意書の取得が必須です。医師が「訪問施術が適切」と判断したうえで同意書を発行します。これは安全性の確保に加え、保険適用を受けるためにも必要です。
次に、初回訪問時の状態確認が重要です。施術者は、身体の状態だけでなく、既往歴や服薬内容、過去の手術歴なども確認します。これらの情報をもとに、無理のない施術計画が立てられます。
施術中や施術後に違和感があれば、遠慮せずに伝えることも必要です。言いづらい場合は、家族やケアマネジャーを通じて伝えてもかまいません。
また、施術を受けるスペースを整えておくことで、転倒や事故のリスクを減らすこともできます。
高齢者や持病のある人が気をつけたいこととは?

高齢者や持病のある方は、体力や免疫力が低下している場合があり、一般の人よりも注意が必要です。
とりわけ、心臓疾患や重度の糖尿病、出血性疾患がある方は、施術内容に制限が出ることがあります。
たとえば、糖尿病で毛細血管がもろくなっている場合は、鍼による出血が長引く可能性があります。また、抗凝固薬を服用している方も、内出血のリスクが高まります。
このような場合、マッサージや軽いストレッチを中心にするなど、症状に合わせた施術に切り替えることで、安全性が確保されます。信頼できる施術者であれば、状態に応じて柔軟に対応してくれます。
大切なのは、「無理に続けない」「施術の効果だけでなく体調全体を見る」という視点を持つことです。
まとめ
訪問鍼灸マッサージには、軽度の副作用が起こることがありますが、重大なリスクはまれであり、正しい準備と連携によって安全に受けることができることをお伝えしました。
副作用への正しい理解と、施術者・医師との情報共有が、安全な訪問施術につながります。まずは信頼できる施術者に相談し、必要に応じて医師の判断を仰ぎながら、安心して利用を進めていきましょう。
※1 日本鍼灸師会「はり・きゅうに関するQ&A」
https://www.harikyu.or.jp/general/qa/
※2 厚生労働省「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の施術に係る感染症対策」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc1315&dataType=1&pageNo=1